大判例

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東京地方裁判所 昭和31年(ワ)1658号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕原告は、被告が本件建物を所有することにより、本件土地を不法に占有していることを理由に、建物収去土地明渡を求めたが、予備的請求原因として、仮りに本件土地につき賃貸借が成立していたとしても、(一)被告は本件土地の一部を他に無断転貸した、(二)原告は被告に対し昭和三〇年三月二五日着の書面で、同年一月一日に遡つて本件土地賃料を一カ月三、三五〇円(その内訳は統制地代二、三五〇円と塀及び庭木造作等の使用料一、〇〇〇円)に増額すから、同年三月末日までに右増額した額による三月分賃料と、一、二月分については従前の賃料との差額合計六、四一〇円を支払うべく、右期日までに支払わないときは賃貸借を解除する旨の意思表示をしたが、被告は右期日までに請求額の一部たる一、八二〇円を支払つたのみであるから、右同日限り本件賃貸借は解除により終了した、(三)本件土地の賃貸借は罹災都市借地借家臨時処理法に基く存続期間一〇年と解すべきものであるところ、原告はその期間満了前に、正当事由に基く更新拒絶の意思表示をした、と主張した。

右(二)の点について、判決は次のように事実を認定しかつ判断して、原告の主張を斥けた。

右催告を受取つた被告は原告の請求額が適正か否かについて疑を持つたので、取敢えず同年三月二十九日に三月分、同年四月二十八日に四月分を従前の統制地代額により各金千八百二十円宛を支払い、更に調査の結果統制地代額が金二千三百五十円であることを確めたので、同年三月二十二日から四月末日までの従前の賃料と右統制地代額の差額合計として金七百三十円を四月三十日に支払つたことが認められる。そして原告は、被告は予め自ら統制地代額は何時でもその変更あり次第当然に支払に応ずる旨の意思表示をなしていたから前記賃料値上の申入は有効であると主張するのであるが、成立に争のない甲第六号証の二の被告の手紙によれば、被告は原告の賃料値上の要求に対して統制地代額超過の賃料の支払には応じられないというに過ぎず、原告主張の如く地代増額の申入以前にまで遡つて当然に統制地代額を支払うことを確約したものとは認めることはできないし、他に原告の右主張を認める証拠はない。又、原告の塀及び庭の樹木、造作の使用料一カ月金千円の請求につき判断するに、本件土地の賃貸借契約にはこの点について何等の約定がないことは弁論の全趣旨に徴し明らかであつて、原告の全立証によるも被告が昭和三十年一月分から前記物件の使用料を負担する特約が成立したものと認むべき証拠はない。従つて前記催告中右部分は無効と謂うの外はない。

従つて原告の前記催告は結局賃料を一カ月金二千三百五十円に増額の請求という限度において有効であり、しかも右増額の効力は右催告が被告に到達した時から発生するものと解すべきである。そうすると原告のなした前記催告は著るしく過大な請求と謂うべく、そして被告としては直ちにこれに応じ得ないのは当然であつて、一先ず昭和三十年三月分として従前の賃料一カ月金千八百二十円を同月二十九日に支払い、統制地代額の調査のために催告期日内に増額分の支払が出来なかつたものであること前に認定した通りであつて、被告の履行遅滞は同月二十三日から同月三十一日までの増額分金百五十九円に過ぎず、従つてかかる軽微な程度の賃料支払の遅滞は土地の賃貸借のような継続的契約における相互の信頼関係を破るものとは謂えないから、原告のなした解除は信義則に反するものであつて到底有効のものと謂うことはできない。」

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